面白い文庫本。

プレゼントを買った帰り電車に乗っていたら、隣で文庫本を読んでいた男の人が突然小さな声であははと笑った。そんなに笑うほど面白い本とはどんな本なのかすごい興味があって、どうにかして何の本か探ろうと思ったのだが文庫本にはカバーがかけられていて何の本だかわからない。
そのうち電車が降りる駅に着く。その人も降りたので、僕は尾行する。しかし、その人は僕が乗り換える電車とはまったく違う電車の方へ向かっていってしまった。そのままついていきたいという気持ちを押さえ、僕はその人の背中を見送った。
その面白い本が何の本かわからない。一生わからないまま。なにかを大切なものをなくした気分。