「喜嶋先生の静かな世界」読了。

ここのところ読むのは実務的な本ばかりだったので、小説を読んでみようと思い、手に取ったのが、森博嗣「喜嶋先生の静かな世界」。

とても良かった。

喜嶋先生の含蓄のある言葉が次々と出てきて、深く考えさせられる。

学科の歓送会では、出て行く人は「今までの経験を活かして」と挨拶をする。たまたま横に立っていた喜嶋先生が、僕に囁いたことがある。
「そんな経験のためにここにいたのか」
喜嶋先生なりのジョークかもしれないから、僕は先生に微笑んで返したけれど、じっくりとその言語を考えてみると、こんなに凄い言葉、こんなに怖い言葉はない。

いいか、覚えておくといい。学問には王道しかない。

すべて作者が日常的に考え、思い巡らせていることを小説の形に落とし込んだものなのだろうと想像できる。哲学の塊のような本。

研究の場という、しん、と張り詰めたような静かな世界に触れ、背筋が伸びる思いがした。

喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)

喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)