「良心の領界」を読む。
何度も読み返したくなる文章というものに出会うことはそうそうあることではないが、「若い読者へのアドバイス……」というタイトルのついたこの本の序文を、この本を読む間、僕は何度となく最初のページに戻って読み返した。
読み返すたびに新しい発見があり、その新しい発見を自分自身に問いかけることとなった。
人の生き方はその人の心の傾注がいかに形成され、またゆがめられてきたかの軌跡です。
検閲を警戒すること。しかしわすれないこと―社会においても個々人の生活においてももっとも強力で深層にひそむ検閲は、自己検閲です。
言語のスラム街に沈み込まないよう気をつけること。
言葉が指し示す具体的な、生きられた現実を想像するよう努力してください。たとえば、「戦争」というような言葉。
自分の感情を押し殺すためでないかぎりは、おおいに笑うのは良いことです。
傾注すること。注意を向ける、それが全ての核心です。眼前にあることをできる限り自分のなかに取り込むこと。そして、自分に課せられた何らかの義務のしんどさに負け、みずからの生を狭めてはなりません。
傾注は生命力です。それはあなたと他社をつなぐものです。それはあなたを生き生きとさせます。いつまでも生き生きとしていてください。
引用すればきりがない。ひとつひとつの言葉が深く重い。それらの言葉が、自分自身の考えにすら疑いを向ける著者の、あらゆる物ごとに対する真摯な姿勢から生まれたものだということがこの本を読むとわかる。
すばらしいこの文章を一度読むことをおすすめする。
- 作者: スーザンソンタグ,Susan Sontag,木幡和枝
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2004/03
- メディア: 単行本
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