「温室デイズ」を読む。

瀬尾まいこの新作。学級崩壊といじめという、中学校の教師という裏の顔(表の顔?)を持つ作者が向き合わざるを得なかったであろうテーマを扱った作品。
崩壊に向かっていくクラスを正そうとするがゆえにいじめを受けるようになるが、決して安易に逃げずにいじめに耐え、やり過ごし、卒業まで教室に通い続けるみちる。そして小学校時代にいじめられた経験を持つがゆえにそのつらさを知り、友人がいじめられる姿を見ていられずクラスに通えなくなり、別室登校を選ぶ優子。たがいに違う向き合い方を選んだ二人の視点で話は進む。
この物語は安易なハッピーエンドなど迎えない。かすかな希望の芽を感じさせるくらいのところで終わる。作者が実際の現場にいるからこそ、そこまでが作者の中のリアルでいられるラインだったのだろう。
主人公のような立場に立たされたとき、逃げないという選択もあるし、逃げるという選択もある。逃げずに強くあれば得られるものは必ずあるし、逃げてどこまで落ちても救い上げてくれる仕組みが世の中にはできている。この選択が正しいなどというものはない。どういう選択肢をとってもいいのだと、作者が子供たちに救いの手を差し伸べてくれているかのようだ。

温室デイズ

温室デイズ