複雑なままに。

たしかスーザン・ソンタグの本だったと思うが、以前読んだ本にあった「複雑なものを単純化して書きがちだが、複雑なものは複雑なまま書くべきだ」ということばが時折ふと頭に浮かんでくる。
日常を過ごしていても世の中はとても複雑にいろいろなものごとが絡んでできていることに気づく。人はその一面だけを切り取って単純に見えるかたちにしてわかりやすいラベルをつける。そしていつの間にかラベルは一人歩きをしだして、元の複雑なかたちはみえなくなっていく。
そういうことのひとつひとつと出会うとき、いつしか「複雑なまま」ということばが心にすとんと収まった。